2006年度版
     今年の当店が使用している北海道道南産天然真昆布は当初豊作の予想であったが、お盆明け
からの天候不順で昆布漁ができず一転して不作の予想となった。
私としては、昨年が不作の年であり今年はガバッと仕入れをする予定であったので少々目算
が狂ってきた。天然ものは往々にして人間の予想が外れ、思わぬしっぺ返しを食らうことが
ある。近年は気候の温暖化ですべてが狂いだしている気がする。春の山椒・ちりめんも同様
である。
とにかく、今年の昆布の出来をこの目で確かめるべく北海道函館へ飛んだ
9月5日 天候 曇り
函館空港で商社(商社とは道南昆布の入札の権利を持っている人)のMさんと会い早速浜へ向かう。
空はどんよりと曇っていて昆布漁は行われていない。猟師さんを訪ね、今年の状況を聞く。「海に昆布はあるのだが、天候が悪く漁がお盆からほとんど行われていないため今年は少なくなるべェ」 やはり不安的中か?
言葉を裏付けるように浜にも昆布をほとんど干していない。
左の写真は、道南3銘柄のひとつ小安町本場折浜の様子
上から雑昆布の干場での仕上げ乾燥風景。下地には砂利が敷き詰めてある。
折昆布の耳断ち作業の様子。おじさんビール飲みながら仕事したらあかんでー しかし昆布一枚一枚丁寧に耳断ちを行う作業を拝見していると何かジーンと来るものがあった。
漁師さんとの乾燥室での会談の様子。右下に見えるのが本場折昆布の頭の部分。会談後貴重な昆布を3枚いただいた。
製品倉庫での1コマ。やはり量が少ない。
9月6日 天候 曇り
当店の使用銘柄である白口浜南茅部漁業協同組合尾札部
支所へ向かう。組合の方と懇談した後製品を見に行くが、倉
庫はスカスカである。「やはり不作なのか?」と再び不安がよ
ぎる。
午後、明日の入札日に備えて実際の昆布製品を見に検品会
場へ向かう。各浜からの見本が3ヶ所の会場にずらりと並び
多数の業者が検品に来ている。当店が使用する銘柄を中心
に見ていくと、肉厚で色もよく品質は良と判断した。
明日は入札日なので、札を入れる価格を考えるためにホテルに帰ることにした。先週あたりから価格はじりじり上げており、価格を予想するのは非常に難しいところである。各入札者の思惑、出方を考えながら価格を決定する。
左の写真は9月7日の訪問地の様子。
天候は昨日と同様どんよりと曇っている。
一枚目の写真は浜の様子であるが、漁に出れない船が何か
寂しそうである。
2枚目3枚目は天候が芳しくない中、昆布の仕上げの乾燥を
行っているところ。漁師さんの顔も曇っていたような気がする。
検品会場に並んだ昆布の製品見本。促成昆布、養殖昆布、
天然昆布などたくさんの種類の昆布が見れる。中には私も初
めて見る昆布もあった。
9月7日 天候 うす曇り
函館から、組合の常務さんと本場折浜を通り黒口浜を見に行く。天候はまあまあだが、海は少々荒れている。今日も残念ながら漁はないようだ。
しかし黒口浜へ入ると、なんと昆布を干しているではないか。
わくわくする気持ちを抑えながら見ていると、おばさんがこんぶを干している光景が目に飛び込んできた。
「すみません、車をとめてください。」と無意識に言っていた。
車を降りて近寄っていくと、笑顔で迎えてくれた。「神戸から来ました」と言うと「娘が神戸にいるんよ」と会話が弾む。「今年も昆布は少ないよ」と予想していた言葉が返ってきた。「がんばって下さい」と声をかけると「ちょっと待ってて、昆布あげるから」と倉庫に行って乾燥の終わった昆布を持って来てくれた。「ありがとうございます」と丁重に御礼をして車に戻った。
先を進んでいくと、今度は若い兄さんが昆布干しをやっている。
「こんにちは」と声をかけると「もう今年は終わりやね」と寂しい言葉が返ってきた。年配の漁師さんが多い中でこういう若い立派な人と出会えて話ができたのは収穫であった。
浜に目をやると、数人が拾い昆布漁をやっている。拾い昆布とは波で流されて打ち上げられた昆布を、カギのついた棒などの道具で拾い集める漁のことで、昆布漁ができない時に行うようである。
左の写真は黒口浜の昆布干しの様子
一番上の写真の中には表面がでこぼこしたガゴメ昆布が真昆布の中に混じって見える。海から上がったばかりの昆布は、茶褐色で表面はつるつるしている。
根っこのついたままの昆布。昆布は海水から葉の表面を通して養分をとるので、陸上の植物と比べると根っこはかなり小さい。根っこの役目は、波に流されないよう岩にしがみついていること。
下の大きな写真は、拾い昆布漁の様子。
一面に昆布が打ち上げられている。潮の流れで一箇所に集まってくるようだ。中央付近のおばさんは体半分をうずめながら昆布を取っている。昆布を扱う者にとって一番目頭が熱くなる光景である。
ようやく恵山岬に到着。
恵山は火山であるらしく、噴煙を上げていた。
海へ下ると、なんと露天風呂がある。
温泉好きの私にはたまらない風景である。ここは以前テレビで紹介されたことのある海中温泉で、満潮時は水没するらしい。
丁度、訪れた時は幸運にも入浴可能時間で、周囲には昆布が打ち寄せられ「ええダシでとんちゃうん」と思わずつぶやいた。
次回訪問時には入浴セット要持参である。
今回はにぎやかな昆布漁の様子を お知らせできませんでしたが、来年はご期待ください。
恵山岬に後ろ髪を引かれながら帰途に着いた。
きれいな海とおいしい海産物、北海道函館は何度でも訪れたいそういうところです。
神戸に戻ると、入札結果の連絡があった。今回はほとんど負けであった。予想よりもはるかに値が飛んでいる。入札は来週以降まだ続くが、苦しい戦いを強いられそうだ。